散る花に亡き母思う
さわやかな日差しを浴びて、桜がはらりと散る。乗ってきたバイクから降り押して歩く。短い花の命を惜しみながら・・・・。
遠い日がよみがえる。いつのころだったろうか、かすかな記憶の中で一か所だけ光のさした部分がある。城跡の石垣を背に父と母、そして私と妹。お弁当を食べていた時プラスチックの皿の中に、桜の花びらがはらりと舞い落ちた。 「まあ!」と母のはなやいだ声。
桜の花のように短い命だった母だけれど、精一杯に咲いた母だった。あたたかく、美しい思い出を残してくれた。
雨よ、風よ、どうか騒がないでおくれ。命ある限り咲かせてあげておくれ。
昭和56年 4月14日 読売新聞 「私の日記から」 掲載
by abeliam | 2007-10-19 13:41 | Trackback | Comments(0)

