人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ふるさと恋し 冬へ移る季節

×月×日
 稲穂が刈り取られ、残った柿の実が二つ三つ、ススキの穂が揺れて、落ち葉が足元で舞う。
秋から冬へと移り変わる、この心もとない季節が、なぜかいとおしく思われる。
 つるべ落としの日が隠れ、冷気がただよい、コートのえりをたてて、家路を急ぐ人が一人二人。ところどころに灯がともり団らんのひとときを待つ。
 このころになると無性にふるさとが恋しくなる。私のまわりにはモダンな家々が並び、便利な生活があり、団らんのひとときがあるのに、火鉢に手をかざしたり、掘りごたつで甘酒などをすすっていたころが、懐かしいのはどういうことだろうか。季節のノスタルジーなのか、それとも年を重ねたせいだろうか。
 こうして急ぎ足で、だれの上にも季節はゆく。

    昭和58年11月22日    読売新聞  「私の日記から」   掲載

by abeliam | 2007-11-21 18:32 | Trackback | Comments(0)