昔の言い伝え 心和む教訓
京都に住んで三十数年、「饅頭喰い」という伏見人形を知ったのは、つい最近のことです。
この人形ができた安土桃山時代のころのこと。「お父ちゃんとお母ちゃん、どっちが好き」と聞かれた子どもが、持っていた饅頭を二つに割り「この饅頭、どっちがおいしい」と聞き返した、というお話です。子どもにとってはどちらもかけがえのない親なのです。子の健やかな成長を願う親からのメッセージと、親思いの利発な子に育つようにとの二重の思いが込められているという人形にまつわる言い伝えだそうです。人形の写真を眺めていると、子育てをしていたのがつい昨日のことのように思い出されます。子どもたちは社会人になりましたが、共に成長しながら日々奮闘したころが懐かしい。今も昔も、親の思い、子供の気持ちは同じなのですね。
家庭崩壊、幼児虐待など殺伐とした事件が続く昨今ですが、先人が残した教訓を思い起こしてみませんか。フーッと心が和むとは思いませんか。
2000年 8月18日 朝日新聞 声 掲載
by abeliam | 2008-07-09 10:52 | Trackback | Comments(0)

